自然鉛

鉛の現在の用途は、鉛蓄電池の電極、金属の快削性向上のための合金成分、鉛ガラス（光学レンズやクリスタルガラス）、美術工芸品（例えばステンドグラスの縁）、防音・制振シートや免震用ダンパー、銃弾、電子材料（チタン酸鉛）などである。 また、金属の中では比較的比重が大きいので放射線遮蔽材として鉛ガラスや鉛シートなどの形で用いられる。例えば核戦争を想定した戦車の内壁や、X線撮影施設の窓ガラス、ブラウン管用ガラスには鉛が含まれている。 また、釣りなどで用いられるおもり（シンカー）の材料としても鉛は用いられている。しかし、近年鉛の毒性が問題となったために、鉛に代わるおもりの素材としてタングステンなどの導入が進められている。それでも、加工のしやすさやコストの面から、未だにこの用途での鉛の需要は根強い。 その質量と柔らかい特性を活かし、ピアノの鍵盤のウエイトに用いられている。鍵盤の側面に穴を開け鉛を差し込み、叩くことで鉛が広がり固定される。 意外なところでは、三味線を演奏するときに使う「木バチ」の重りとしても使われている。このため「木バチ」を処分する際は、鉛を取り出す必要がある。 ※取り出さずにゴミとして処分すると、焼却炉の中で溶けて重大な汚染を生じる危険性がある。 この他、灯油やホワイトガソリンなどの液体燃料を加圧・気化して燃焼させるポータブルストーブやブロートーチ、ランタンでは、気密性と耐熱性の高さから継ぎ目のガスケットに現在でも鉛が用いられる。さらに、路面表示用白色塗料としても利用されている。 なお、かつては水道管やはんだ、おしろいなどに用いられた顔料についても鉛は大量に利用されていたものの、鉛を用いないものへの置き換えが進められている。この事情については無鉛化の項目も参照のこと。

自然鉛は多くの有名な芸術家が使用した塗料の成分であり、画家がそれによる鉛中毒を患ったという議論があります。ミケランジェロ、ゴッホ（絵を描くときに筆を吸った）、ゴヤは、その塗料に含まれる鉛に起因するかもしれない抑うつ、妄想、または身体的病気に苦しんだ芸術家の一例です。

湿った空気にさらされたバルク鉛は、さまざまな成分からなる保護層を形成します。炭酸鉛（II）は一般的な成分であり、硫酸塩や塩化物も都市や海洋の環境では存在することがあります。この層は、バルク鉛を空気中で実質的に化学的に不活性にします。多くの金属同様に、粉末の鉛は発火しやすく、青白い炎で燃えます。フッ素は室温で鉛と反応し、フッ化鉛（II）を形成します。塩素との反応も同様ですが、加熱が必要であり、生成された塩化層が元素の反応性を低くします。溶融鉛はカルコゲンと反応して鉛（II）カルコゲナイドを生成します。鉛金属は硫酸およびリン酸に耐性がありますが、塩酸や硝酸には耐性がありません。結果は生成された塩の不溶性およびその後の受動化に依存します。有機酸、たとえば酢酸は酸素の存在下で鉛を溶解します。高濃度のアルカリは鉛を溶解し、プランバイトを形成します。

日本語名称の「鉛（なまり）」は「生（なま）り」=やわらかい金属」からとの説がある。 元素記号はラテン語での名称 plumbum に由来する。